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弾き語り、おりたたみ自転車とカメラのブログ

マドリッドの旅 その4 ~ソフィア王妃芸術センター (Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofía)

Untitled

 

マドリッドには3つの大きな美術館がありますが、今回はピカソの作品が多く展示されているソフィア王妃芸術センターへ行くことにしました。特にピカソに思い入れがあるという訳ではないのですが、美術に疎い僕でも知っているゲルニカが展示されているということだったので興味本位で行ってみることにしました。

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結論から言うと、今まで訪れた美術館の中で一番印象に残った美術館です。と言っても美術に弱い僕が、美術品の価値を感じられたはずがありません。そこから感じられるスペインの歴史、これがとても心に残ったんです。

 

この美術館はとても広い美術館で、回るには丸一日必要な感じでした。時間が限られていたため、ゲルニカの展示されているフロアを見ることにしたのですが、この選択がよかった。

 

この美術館では、作品は作家ごとではなく、時代ごとに展示されています。だから例えばピカソの作品もいろいろなフロアに散在していて、まとめて見ることはできません。その代わり、同じ時代に書かれた別の作者の作品がまとめて展示されています。

 

ゲルニカのあるフロアには、スペイン内戦時に描かれた画、撮られた写真が、内戦の状況説明ととも展示されています。多くの作品が、内戦と言う行為に対する怒りや悲しみにあふれていて心を打ちます。もちろん戦地に向かう人を英雄視するような作品もありますが、多くは内戦そのもの、もしくはフランコ率いる反乱軍に向けたメッセージ性の強いものです。ピカソもダリも同じ目線で反戦のメッセージを送っている。そういう作品をまとめて見ることで、内戦がいかに凄惨なものであったか、それに対して立ち向かおうとした人たちの意志、スペインの人たちが乗り越えたものの大きさが感じられます。単に個々の美術品を鑑賞するのではなく、美術から歴史と人の意志を感じることのできる数少ない美術館だと思います。

 

スペインの内戦は、1936年の選挙によって成立した左派政権が行ったブルジョワからの財産没収などに対して、保守勢力が反乱を起こしたことに端を発します。それだけであればスペインと言う国を形成するうえで必要な内戦だったと言えるのかもしれませんが、当時は右派と左派の勢力争いが世界的に行われていた時代。左派の背後ではソ連が、右派の背後ではドイツ・イタリアが支援をし、必要以上に戦線と被害を拡大していきます。その上、時期は第二次世界大戦前。多くの兵器が試験的に使用されたとも言います。スペインの人々の意志を超えた大義の無い内戦だったと言わざるを得ないでしょう。

 

ゲルニカはスペイン北部の小さな村の名前。その村をドイツ軍が布告もなしに爆撃して、村は廃墟と化しました。そのことを主題として描かれたのがピカソのゲルニカです。当時、画家をはじめ、多くの知識人はフランコ率いる反乱軍にスペインを追われるか殺害されるかしたそうで、ピカソもフランスでゲルニカを描いたそうです。

 

こういった時代背景は展示されている美術品の意義を大きく変えます。スペインの歴史を語る美術品を飾られている。一番印象に残る美術館と言った理由はここにあります。

 

ここに書いたことのほとんどは、部下のスペイン人とその奥さんが冷静に淡々と話してくれました。そのことがまた、この美術館を印象的にしたのかもしれません。すさまじい過去を乗り越えて、それに向き合った上で明るく生きている人たち。失礼ながら『底抜けに明るい人たち』と言う僕の中での『スペイン人』のイメージを大きく変える美術館でした。

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