よたろぐ

弾き語り、おりたたみ自転車とカメラのブログ

多国籍チームで働く上での日本人の英語力と立ち位置

多国籍チームで働く上で、日本人の弱みは『英語によるコミュニケーション』だとよく言われますが、そこには一言でで片付けるには難しいさまざまな側面があります。多国籍チームで働き始めて7年以上、イギリスで働き始めて2年以上、一応それなりの経験はできたと思っているので、自分の経験に基づいて多国籍チームにおける日本人の立ち位置を考えていきたいと思います。

 

まず、日本人の英語力ですが、残念ながら低いです。これはもうどうしようもない。シャイな国民性が原因なのか、教育が悪いのか、理由は定かではありませんが、『聞く』『話す』という点において、日本人の英語のレベルは低いと言わざるを得ません。

 

僕のチームには中国・バングラデシュ・ポーランド・マレーシア・イタリアなどさまざまな英語圏以外の国の人間がいますが、誰もが僕よりも流暢な英語を話します。それも彼らと僕の差は小さなものではなく、かなり大きな差があります。

 

では彼らが僕よりも仕事ができるかというとそうではありません。仕事で必要な英語力と日常会話に必要な英語力は全く別物だからです。

 

仕事では、必要なことを明確に伝え共通理解を作ることが大切です。そして、そのことだけを考えるのであれば、大した英語力はいらないんです。むしろ流暢な英語で話してしまうことで論点が曖昧になってしまうことがあります。日本語でも話しているうちに論点が曖昧になってしまう会議があると思いますが、こういうことが多国籍チームでも、イギリス人同士の会話でも頻繁に生じます。

 

特に多国籍チームにそういうケースは多い。持っている文化的背景が違うので、同じことを話していても興味のあるポイントが違うんですね。例えば1週間以内に仕上げたい仕事がある。それが『可能か?』を考えるときに、Aさんは業務量が1週間で妥当かを考えているのにBさんは品質が担保できるかを考えている。

 

AさんもBさんも流暢な英語を話すので、お互いの自分の思うこと話し続ける。そして話し続けているだけで共通理解ができないまま会議は進んでいく。結局業務量についても品質についても二人でじっくり話し合わないまま会議は終わり、何が課題か、結論は何かがわからなくなる。

 

なぜこんなことが起きるのか?それは彼らが基本的に『主張する』ことを大切にしているからです。自分の知っていること・意見を伝えることがチームに貢献すること、それが彼らの考え方です。だからまず自分の意見を伝えることを優先します。

 

でもこれだとチームの方向性が決まっていきません。だから欧米の管理職は聞き上手で、かつチームの意見を総合して方向性を示すこととが上手な人が多いんです。それがチームをManageする上でもっとも重要なことだからです。

 

つまり、話を聞くことができて、合意を形成することができる人は、それだけで存在価値があるということになります。

 

さて、われわれ日本人は『主張ができない』と言われます。その背景には主張することよりも聞くことを大切にする文化的背景があると思っています。

 

相手の話をじっくり聞くことができる、これは多国籍チームでは強みになります。みんな、基本的に聞いてもらえないことを前提に必死で主張をする癖がついています。だから自分の話を聞いてもらえるだけで安心するし、それによって心を開く。結果として共通理解が作りやすくなるし、相手も必要な妥協はしてくれるようになる。

 

僕は日本人と働いている間は『自分勝手』『話しかけにくい』と言われることが多い劣等生でした。それが不思議なもので、多国籍チームではGood Listenerと言われます。そしてそう認知されると仕事が格段に進みやすくなります。僕ですらそうなので、多くの日本人はもっとよいListenerになれるということだと思います。

 

よいListenerであれば自然に仕事は進むようになります。先に書いた通り、よいListenerであることは管理職の条件ですから、キャリアが開けてくる可能性も高いです。だから日本人は思っているよりも多国籍チームへの適性は高いのではないかな、と思っています。

 

『よいListenerになるためには英語力が必要じゃないか』と思ったあなた、鋭いです。確かにその壁はあります。ただ、わからない時はその場で聞き返せばよいのです。彼らは聞き返されることで『話を聞いてもらえている。』と感じてくれます。聞き返されることをネガティブに感じる人はほとんどいないと思います。

 

『聞いた上で方向性をを示すときに話せなきゃいけないじゃないか』と思ったあなた、さすがです。でも意思を伝えるだけであれば中学校の英語で十分です。だからたいそうな英語力なんて必要ありません。

 

日本語は片言になってしまうと違和感が出て、コミュニケーションに悪影響を与えてしまいます。だから英語もそうだと思うかもしれませんが、少なくともビジネス英語は意思疎通のツールとして使うことができます。おそらく色々な国の人が英語でビジネスをしているのでみんな慣れているのだと思います。片言であろうが、聞き取りができなかろうが、それでコミュニケーションを嫌がる人はいません。

 

だから世界の人とビジネスをしたいなら、英語力重視するのはあまり正しい選択とは言えません。日本人の特性である聞く力、合意を形成する力のほうがより重要です。今度小学校から英語を教えるようになるらしいですが、そんなことより重視する教育があるように思います。