よたろぐ

弾き語り、おりたたみ自転車とカメラのブログ

働き過ぎより仕事に対する考え方が問題なのではないかと思う

先日、NHKで過労死に関する特集を放送していました。

 

死因として、睡眠不足などによる心筋梗塞などの病気が多いことが挙げられていました。睡眠時間が5時間を切るような状況になると、心筋梗塞などのリスクが高まるとのことでした。だから労働時間を削減することが大切なのだと言う中身だったと記憶しています。

 

この理屈には正直違和感を持ちました。5時間以下の睡眠時間のひとは結構いると思うからです。積極的に趣味を頑張っているひとなんかには多いと思いますし、忙しいビジネスマンでもそう言う人は結構いると思います。僕もそう言うスケジュールで仕事をしていることは多いのですが、かと言って健康状態に不安があるわけではありません。(健康診断していないから本当のところは分かりませんが。)

 

ではなぜ自分が健康上の不安を感じていないのか。それは精神的負担が少ないからだと思います。僕は自分の意志で自由に仕事をしています。そのために精神的負担が少なく、健康に悪影響が少ないのだと思います。対して、番組で取り上げられているケースは、勤務時間よりも仕事を押し付けられることによる精神的負担の方が問題だと感じました。

 

たとえば、僕の業務の場合は売り上げ目標は上から設定されますが、それに到達するためにどのような手段を講じるかは自分の意志で決められます。そして、自分でやると決めたことを実行するために時間を使います。その実行に時間がかかる場合は、どうしても勤務時間が長くなってしまいますが、それは自分で決めたことなので、ある程度楽しく取り組めますし納得感もある。だから精神的な負担は必ずしも大きくないのだと思います。

 

これに対して、番組で取り上げられていたケースのほとんどは『あれもこれもやれ』と言われ、時間が無くなっていました。実行する中身を他人から押し付けられるわけです。これではやる気も起きませんし、まじめな人ほど精神的なプレッシャーを受けてしまいます。結果としてそれが健康状態に悪影響を与えることになるのではないかと思います。

 

こういう押しつけ型の仕事の仕方をしている限り、勤務時間が短くなっても、仕事が健康への悪影響を与える状況は変わらないと思います。だから、勤務時間を短くすることはあまり解決にはならないのではないかと思うわけです。たとえば、法律で厳格に勤務時間を区切ったとしましょう。いま勤務時間が長くなりがちな真面目な人たちは、自分のタスクがこなせないことに申し訳ないと思って、やっぱりプレッシャーを受けてしまうのではないでしょうか。

 

問題は働く時間ではなく、働き方だと思います。やることを決めつけられ、それに対して反論の余地がない。それにもかかわらず、結果には文句を言われる。それでは健全な精神状態で働けるわけがない。だからこの文化を変えなければ、きっとこう言った問題はなくならないと思います。

 

この、『やることが細かく押し付けられる』モデルは、どの国でもあることなんだと思いますが、日本の場合はすごく極端だと感じます。たとえば引き継ぎ。個人的には業務の担当が変わると言うのはその業務のやり方を変える良いチャンスだと思っています。それなのに日本では前任者がすごく細かな手順を準備することが多いです。自分のやり方が完璧で、その通りにやることが正しいと思っているならわかりますが、そうではなく、責任感から準備している。それによって後任者は考える機会を失い、組織は効率化や改善の機会を失う。こんな悪循環が不思議でなりません。

 

ではなぜこの『やることが細かく押し付けられるモデル』が日本に蔓延しているのか。それは、押し付ける側はそれをマネジメントだと考え、押し付けられる側の大多数の人が、その通りにすれば責められないと言う安心感を得ているからだと思います。

 

外国の優秀なマネージャーたちは、部下のモチベーションと成果に応じた公平な評価をとても気にします。それが優秀な人材を確保し、結果を出すためにもっとも効果的な方法であることを知っているからです。だからやることなんか細かく決めずに、それぞれのターゲットの設定、それに到達するために各々に何が必要なのか、到達できた場合のインセンティブをどう設定するかを気にします。

 

外国の優秀な部下たちは、上司の押し付けをよしとはしません。それによって結果が上がらなければ自分にプラスにならないことを知っているからです。だからおかしいことはおかしいと言うし、運悪く理解のない上司についてしまった時は別の仕事を探します。

 

なぜ、日本と外国の間でこのような差が出てくるのか。それは日本の転職をよしとしない文化にあると思います。

 

前出の通り、外国のマネージャーは優秀な部下が組織を去ることを大きなリスクと考えます。それが直接自分のビジネスリスクになるからです。この部下を失うリスクが日本では0に近い。だから、マネジメントはマネジメント能力が無くてもできてしまうわけです。マネジメントと現場で必要な能力は全く違います。長嶋茂雄さんが素晴らしいプレーヤーでも素晴らしい監督とは言えなかったように、よい営業マンがよい営業部長になれるとは限らないわけです。でも、日本の場合は部下を失うリスクが少ないので、営業成績の良かったおっさんが部長になり自分のやり方を押し付ける。そしてそのおっさんの根性論についてこれない部下に対してなぜできないのかと迫る。これが日本の典型的な悪いパターンです。こんなダメなマネージャのもとでは人材が流出してしまう。そういった文化を作って、こういうマネージャを排除していく必要があると思います。

 

日本の会社ではこういう上司のもとでも我慢する人が多いように感じます。転職をよくないこと、自分のキャリアに不利なこと、と考える傾向があるためです。この考え方こそ、つらい立場にいる部下の人の逃げ道をなくし、能力のないマネージャを容認している本当の要因だと思います。

 

政府及び業界団体は、労働時間短縮などと言う甘い考え方ではなく、雇用の流動性を高める工夫をすべきだと思います。よい会社には良い人材が集まり、ダメな会社は人が逃げていく。そういう厳しい現実に経営者は直面すべきではないのかな?と思うわけです。たぶんこの国は上司というものにすごく甘い国になってしまっていると思います。