よたろぐ

弾き語り、おりたたみ自転車とカメラのブログ

政治家が憲法を変えるって、泥棒が刑法を変えるようなものじゃないの?

安倍晋三氏が改憲に意欲を示したようですね。僕は別に護憲派ではないのですが、彼の言動には賛同できないことが多いので、思うところを書いてみます。バイアスのかかりまくった独り言なので悪しからず。

 

立法・行政に携わるひとは、憲法・憲政とは何なのかをきちんと理解する必要があります。特に99条は重要。明確に憲法の性格を規定しているので大事です。

第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 

憲法による制限を受けるのは天皇陛下と公務員だけだと言うことです。役所は憲法に背く運用をしては行けない。議員が作る法律は憲法と矛盾しては行けない。裁判官の判決も然り。これに対して国民は何の義務も負っていません。そうなんです、憲法の本質は国民が自分たちを侵害する可能性のある権力を制限するところにあるんです。

 

世界の歴史を見てもそうですね。代表例であるフランス人権宣言も、ひとの権利を規定することで、もともと王が持っていた権力を制限すると言うことが重要なんです。日本の教育だと人権そのものの意味とかに主眼が置かれがちです。もちろん人権という概念は素晴らしい発明で重要なものですが、憲法の役割とは直接関係ありません。憲法を頂点として法律・行政といった権力を規制して行くと言うことに憲法の役割はあるんです。その規制の大きな理由の1つとして人権が存在するんですね。

 

こう考えるとタイトルの意味がわかってもらえると思います。憲法の規制を受ける側の人間が憲法を変えようとするのはおかしいですよね。泥棒が『いまの刑法は時代に合ってないよ。貧乏なひとだって多いんだから、時代に合わせて多少の盗みはOKにしないといずれ自分たちが困ることになるよ。』と言ってるのと同じに見えます。もちろん世論は議員を通して反映されるべきなんですが、今は世論を反映していると言うよりは安倍氏の思いで進んでいる感じ。その違和感がものすごいです。

 

改憲の理由として、GHQから押し付けられた憲法だと言うこともよく挙げられることです。これについては日本人が作ったと言う意見もあるみたいですが、仮にGHQが押し付けたものだとします。で、それが何の問題なのかわかりません。日本国憲法は、戦時下で天皇陛下を後ろ盾に集中してしまった公務員の権力を制限しています。憲政の趣旨に適っているのだから誰が作ろうと構わないでしょう。どうして日本人が作らなきゃいけないのか全然理解できません。

 

9条が現状に合っていないのは事実だと思います。少なくとも自衛隊という戦力は保持しているわけで、それを認めた上で戦力行使の範囲を明確にすることは必要な気がします。でも改憲の作業を、憲政の意味すら理解できない政治家にはやってもらいたくないと思ってしまいます。